月下の孤獣 5
      



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聡明そうだが色香もなみなみで蠱惑的。
頬もするんとした どちらかといや女顔系だが、
とはいえ、長身で肩もかっちりしていて背中も広く、
語彙も豊かで会話もなめらか、
どんな横やりにも屈しない誠実な男として貴公子ぶれる美丈夫ながら…。
身内へは油断しまくりで、ちょっぴり怠け者でちゃらんぽらん。
要領がいいという以上に頭はいいみたいだけれど、
人への察しは怪しそうな御仁だと、
恩人への評というには失礼ながら
芥川としては太宰治という人物をそうと思っていたのだが。

 『あんたから時々何とはなく拾えてた
  底の知れない奴っていう違和感はそのせいかってのが やっと判ったよ。』

与謝野せんせえの言うところ、

 何を隠してだか胡散臭い途惚けようをし、
 それは巧みに一線を引き、人を矢鱈と踏み込ませない。
 掴みどころのない人性なのも、安易に信頼という縁を結びたくはないかららしいが、
 それって一体誰を守ってのことなのか。自衛かそれとも…?

そんな太宰が、実は他とは別格と気にかけていた元教え子が、
武装探偵社の新入り、芥川を拉致せよという任を受けたことから事態は大きく動き出す。
その探偵社に太宰がいることを先んじて知っていたらしい彼は、
策を弄して企てが自爆するように運んだが、
芥川に掛けられていた懸賞金に目を付けた別口の黒幕に引っ掻きまわされ、
単独で駆け回った白虎の少年は、
起きた事態からのあれこれが誰にも波及せぬよう、自刃を構えていたらしく。
そうなる恐れを 途中参加ながらも早々に危惧した、
実は悪魔的に頭の回る策士との評も高かった元幹部殿。
言葉が足らなかったがゆえ、不憫な方へ方へと追い込んでしまった愛し子のために、
女性相手でもそこまでは回さない
“情緒スキル”をフル稼働させた…というとちょっと言い過ぎかもしれないが、
此処まで利他的で、自分を大事にしない困った子だとは思わなかったか、
だとしたら、自分の想定を超えていた存在だったことへの抵抗なのか対抗なのか。
単身の方が動きやすいからか、もしかして万が一の危急にあっては自分だけ切り離しやすくするためか、
決して打算からではなくのことながら、他人や事象へ必要以上には踏み込まないお人が、
常から構えておいでのそれ、人当たり良く見せかけて実は薄情でいる その原則を思い切り放り投げ、
今現在の居場所を振り捨てても構わないという、ある意味そちらも捨て身の構えで躍起になり、
暴走しかかっていた虎の少年に何とか追い着いて引き止めにかかった。

 『誰も信じちゃいけないなんて、勝手な呪いをかけておきながら
  そのまま、一人ぼっちに放り出したのだものね。』

褒めてほしくってなんていう可愛らしい欲からどころじゃあない、
その身を盾にしてもいいからと誰かの役に立ちたいと心から思っているような不憫な子。
お前なぞ誰も望んではいないという呪詛を物心つく前から刷り込まれ続けて来たそのせいで、
そんな悲しいことを願望としているような危なっかしい子だと見抜いた太宰としては、

 人の役に立ちたければ用心深くいなさいと、
 コロッと足元掬われるような存在が誰かの足を引っ張らないと思うかい?と言いきかせてた

周囲の頼もしい顔ぶれには頼っていいんだ甘えていいんだとストレートに言っても聞くかどうかと危ぶんで、
いっそ彼の信条に訴えた方がいいのではと、
やや遠回しな言いようで“用心深くいろ”と言ったのが一応は功を奏してか
むやみやたらと身を呈すような無謀はしない子に育ちはしたものの。

 用心深くいなさいという教えを、
 人を頼っちゃあいけないと選りにも選って真逆に解釈されていたとは、と

思い上がってたわけじゃあないが、そこまで我を譲らない子だったとはと。
こたびの騒動の真相を、ほぼ対岸という遠きに身を置きつつもそれはするすると解いた末、
自分の口からはっきりと謝罪せねば、
そしてどれほど周囲から必要とされ、愛されているのかを判らせねばと思ったらしい先達殿。

 『…がっかりしましたか?
  ボクがそんな頼もしい子に至ってない見掛け倒しで。』

この騒動の収束を兼ね、自決するつもりだったらしい虎の少年なのへ、
何とかギリギリ、それを阻止せんと駆け寄ったのは間に合ったものの。
察してもらおうとしたところは問題ありありだったどっかの院長とある意味で変わらぬと思い知らされ、

 『私よりずっと大人で懐も深くなった。
  こんな優しい良い子に、私は無理から余計な言いつけを課してしまっていたのだね。』

気が付かなくて済まなかったねと、手を延べ懐ろへと招き入れて、

 『勝手に頼もしくなったと思い込んで、
  大人になったねと甘えた応対をした私を許しておくれ。』

言葉を徒に弄さず、はたまた察しておくれとぼかすでもなく、ちゃんと一から十までと。
文字通りその身を包み込むようにして真の言葉を切々と告げたところ、
これはさすがに通じたろうし、頑なだった気持ちへもすんなりと届いたか。
独りでいるのに必要だった城砦を溶かすように、宝石みたいな双眸からほろほろと涙があふれだし、
年相応の、いやいやもっと幼い子、
その頃は随分な我慢を強いられていたのだろう童子へ戻ったかのように、
自分からも師へとしがみつき、
自分は此処にいると叫ぶ代わりのように声を上げて泣き出した敦少年だった。




  ………で。


ひとしきり泣きじゃくる少年を他の一同も見守り、そのまま思う存分泣かせてやって。
それから 芥川が拾い上げていた起爆スイッチを差し出し、
この後どうするつもりだったかを聞き出して。
問題の貨物船は自動航行システムにて、地べたの土地で言う場末の海域までを操作して向かわせ、
ちょいと物騒ではあったが当初の計画通り、
積み荷の武器群に間近なところへ設置されてあった爆薬を起爆させ、船倉に穴を開けてそこに沈めた。
勿論、爆破前には全員で武装探偵社陣営の高速艇へと移動しており、
港湾警備隊が異変を嗅ぎ取って駆け付ける前にと、一般のクルーズを装っての航行を続け。
ヨコハマ港の一角にある、個人的なヨットや船舶が契約している繋留用の桟橋を目指し、
野次馬や報道関係だろう船やらヘリやらが集まりつつある海域から離脱を図っていた高速艇だったが、

 【 だ、太宰さん、与謝野さんっ。】

昼下がりの穏やかな海の上、
金田湾を横手に望みつつ、久里浜が遠目に見えて来たかという辺りで、
操舵室に居る谷崎から、甲板に立つ皆のところへの通信器越しの声がかかる。
やや焦っている声音の原因は、こちらの陣営にも判っており。
皆の視野へと飛び込んで来る格好で、港の方からぐんぐんと近づいてくるクルーザーがあって、
その操縦者が無線か何かで操舵者へと直に呼びかけて来たのだろう。
白波を蹴立てて近づいて来る向こうの船の船首には誰かが仁王立ちになっており、

 「…あ。」
 「あ"。」

期せずして敦と太宰が同時に声を出したのは、彼らに見覚えが重々あるお人だったから。
敦の側は意外だと驚いたような声だったが、
太宰の発したそれは同じ音でありながら重い濁点付きに聞こえたそれで。
そんな反応の差に与謝野と芥川が顔を見合わせておれば、

 「あつしぃ〜〜っ。」

そのまま甲板から飛び込んで来かねぬ絶唱ぶりにて、腹の底からの声で名を呼ばれ、
白い少年がありゃりゃあと肩をすくめる。

 「わあ。////////」

赤くなっているのは恥ずかしいというより照れているからか。
そこはかとなく嬉しそうな当事者は置くとして、
何故だろうか、黒スーツに黒外套というそれはシックな装いだというに、
太宰に負けず劣らずの それはそれは整った風貌が遠目でも分かるほどの美丈夫だというのに、
潮風にはためくサイケな色彩の大漁旗を背負っていても似合いそうな様相に見える。
船首部分を踏むように片足を掛けての、胸高に腕を組むという立ち姿だったからかも?

 「この風の中でも外套や帽子が吹っ飛ばないのはさすがだねぇ。」
 「なんの、重力の呪いのせいですよ。」

先程までの感動的な情景の主役だったお顔はどこへやら、
忌々しそうに言い返したそのまま、後方に位置する操舵室を振り返り、

 「谷崎くん、コース変えて振り切って。」
 「こらこら太宰。」

勝手なことを言う太宰を 与謝野先生が窘めているのにかぶって、

 【手前、その船の位置情報 送っといてその態度は何だっ!】

何とも手際のいいことで、
通話状態になっていたのだろう、敦のスマホからそんな大声が飛び出してきたのが何ともはや。
タイバン関係なればこそ物騒に聞こえかねない応酬にも聞こえるそれへ、

 「あああ、なんかお懐かしい。」

怒号を直に聞くのはごめんだと さすがに耳から離していた端末を手に、
かつてはこういうやり取りを日常茶飯でやらかしてた二人だったらしいと、
事情を知り尽くす虎の少年が心から嬉しそうに微笑んだのが
一服の清涼剤に…なるようなお手柔らかな事態じゃあないよねと、
芥川と谷崎が まだまだ事情の足りない同士で同意し合っていたのは言うまでも無かったり。(笑)


  それはともかく。


小柄だが威圧や威容は十二分、
さすがはポートマフィアの五大幹部が一隅という筆頭格だけはある存在のお出ましに。
谷崎は操舵があるのでとキャビンから出て来ないままだったし、
芥川も初対面な相手だということもあり、肩に力が入るばかりという状態だったものの、

 「敦、無事か? 青鯖野郎に無神経な何か吹き込まれちゃあないか?」
 「ちょっとちょっと、失礼だよ、君。」

一応は舫綱で船同士の胴辺り同士を接舷したとはいえ、
向こうからこちらへと乗り込んで来たのは中原と名乗った幹部殿だけ。
操舵や供らしい人々も同乗してなくはなかったものの、
彼がしっかと言い含めたか、もともと彼自身の随身たちなのか、
幹部殿の意を酌んでのこと、無音の体でいる模様。
中には案じるように見やってきて、
敦と目が合うとよかった無事でと言いたげに頷く顔もいるようで。
孤軍奮闘した末に帰るところもないと思うてか自刃しかかってたらしいが、
何の何の、こうまで頼もしい格の方々から 案じられの可愛がられているようなのが重々うかがえて。

 『謙遜も過ぎると厭味とは言うけれど、あの子のは自己否定のしすぎだ。』

ああまで案じられているんだ、ちゃんと甘えて返してやんなきゃあ つれないにもほどがある、
何でそういうところも教えてやらなんだと、与謝野さんが後日 太宰へ叱言したものの、

 『それだとあの子、天然の小悪魔さんになっちゃいますよ。』

と、何故か谷崎が助言したのだが……それはさておき。(笑)
脇目もふらずという素早くもなめらかな足取りで、
簡素な白シャツに七分丈のズボンなんていう いつもとは違う装いなのだろう虎の少年へと迷いなく歩み寄り。
二の腕を掴み締め、薄い肩を叩き、白銀の髪が載った頭などをあちこちから見回す彼で。

 怪我は?痣はないか? シャツが埃まみれだが、乱闘沙汰になったのか?
 あああこんなところに絆創膏が、手当てしたのか?と長々と案じられてののちに、

無傷とは言えぬがまま無事ならしいと確認されての、はぁあと大きく安堵の吐息をついた黒い帽子の幹部様。
しばらくほど、案じた手児奈自身に凭れているかのようにじっとしていたが、
よしよしと納得したそのまま、改めて探偵社陣営の方へと向き直り、

 「敦が世話を掛けたな。済まなかった、礼を言う。」

帽子を手に取り胸元へと伏せると、そのままぺこりと頭を下げる彼で。
立場的には敵方にあたろう相手、しかも自身の部下の前だというに、
そこは通すべき筋ということか、
躊躇なく謝罪し、誠実な礼を述べられるところが、何とも豪気で男らしい。
相変わらず、どこか忌々しいという表情を隠さない太宰も、
恐縮したように一緒に頭を下げる敦には言葉がないものか、ぐぬぬと表情を歪めただけだったものの、

 「そこでだ。
  敦と、そこの主犯野郎を、此方に引き取らせてもらえはしないか?」

空いている船室がないではないが、
相手は異能者、目を離すと何を構えるか判ったものではないと。
そこは荒事が日常業務の方々で、小荷物扱いのまま視野の中に置いていた、
こたびの騒ぎの黒幕だった β氏がぐるぐる巻きに縛られたまま甲板の一角に転がされていたのを、
彼もまた害虫の死骸扱いで冷ややかに見やった中也であり。
さすがは最高位幹部の一瞥で、
それでなくとも自身の行く末を案じてびくついていた小悪党にはすさまじい脅威であったらしく、
脚から腕からぎゅうぎゅうに括ってまとめられていた身をますますと竦めさせるだけの威力はなかなかのもの。
そうまでの剛い視線を向けた冷徹な貌も出来るのに、
ふっと表情を緩めると手にしていた帽子をかぶり直してから、
あちこち駆けまわったり異能まで顕現させたり、
しまいには何年ぶりかで声をあげて泣いたりまでして、もうもうすっかりと疲れ果てている敦をいたわるように、
腕を伸ばすと背中をポンポンと柔く叩いてやり、

「こいつがウチの人間だってことはまだ公には知られちゃあいない。
 軍警からの手配とやらも非公式の写真だけだろう?」
「…まぁね。」

さすが情報収集はお手の物で、敵対勢力の間での取り沙汰まで把握できているらしく。
そんな風に随分と絞って的を衝かれては、
事実は事実だし、ことが自分でも今回は救いたいと奔走した存在に関わることだけに、
彼へはいやに反発していた太宰も先程までの強気な態度の鉾先がやや鈍ったほど。
そんな彼の代わりのように口を開いたのが、

 「地下鉄爆破事件の関係者なのにかい?」

間違いなく“ポートマフィアが起こした騒動”ではあるのだし、
少なからず怪我人も出ている上に、車両や線路などなどは大きに損傷もしただろう。
その騒動に巻き込まれ、翻弄されていた与謝野がそうと追撃したものの、

「こいつが関わってた証拠はないし、
 恐らく、事態収拾にあたってた側じゃあなかったかい?」
「う…。」

上から目線になって威容でもって言い臥せるというのじゃあなかったが、
物は言いようという持って来ようでもある。
しかも、与謝野としては自分と共にあの忌々しい下駄白衣を倒した“同志”なだけに、
その指摘は覆し切れぬ事実だったし、

「異能が関わってる案件だけに、公的采配で収拾付けんのは骨なんじゃあないか?
 時間も掛かろうし、何よりそっちにも伏せにゃあならない箇所がなくもなかろう。」

ちろりと見やったのは太宰であり、だが、そこをつつきたいのじゃあないようで。
敦がハッとして顔を上げたのとほぼ同時、

「この糞虫に人権やらなにやら着せかけて
 何カ月もかかってあーでもないこーでもないと、法廷とやらに引き出して “とやこう”出来んのか?」

身元確認からしてウチの手の者だってところから始めにゃならねぇ。
裏切者もいいとこだから、罰するのは構わねぇしいくらでも協力は惜しまねぇが、
上の者に苦渋を舐めさせたってんで、勝手に復讐買って出る顔ぶれもたんと涌くかも知れねぇ。
明るい所で裁こうというからにはそういった手間暇や弊害も覚悟の上なんだろうが、

 「何しろ“異能者”だからな。
  色々と面倒な処断が挟まる上、公に出来ないところが重なった末、
  面倒臭がった判事がついのこと 初犯だしってことで日和って執行猶予付けて終わりなんて運びにならねぇか?
  それとも、無かったこと扱いになって極秘獄とやらに生涯監禁とか?」

 「それは…。」

所謂 通常の公序良俗を下敷きとするならば、そんな対処いつの時代の伝説だと一蹴すべき代物だが、
与謝野も口ごもってしまう辺り、
通り一遍の正道はそれとして、だがだが有って無きものとされている異能が絡むと
あれこれ例外や抜け道もたんとあること、大人の理屈として判るお人だからこその苦々しいお顔と察せられ。

 「内務省は伏魔殿らしいから、
  異能がらみの案件への最後の手段として、そういう手回しだって“已む無く”執れるんじゃねぇのか。」

で、此処からは俺の独り言なんだが、と。
そんな風におもむろに断ってから、

 「だったら それをこっちが引き受けようじゃねぇかって思うわけだ。」

種田長官への交渉も何ならこっちで引き受ける。
何と言っても こやつはウチを大きに裏切ってとんでもないことしやがった “大うつけ”だからな。
首領も知らぬうちにヨコハマの環状線を再起不能にしかねなんだほどの大事を起こしかかった大馬鹿だ、
その帳尻合わせを “マフィアの仕業だ”なんて持って来られるのも業腹なんでな。

 「身柄の確保が出来なんだとの泥をかぶってもらうだけの貸し、
  きっちり帳面につけさせてもらうつもりだ。」

 「…いいのかい、中也。そんな大事を安請け合いして。」

せめてもの意趣返し…というか、
さすがにそこまでの条件を彼が勝手に出していいものかと危ぶんでのことだろう、
元同僚の太宰が低い声になる。
敦もまた深く案じているようで、細い眉を寄せ、ハラハラと中也を見守っていたが、

 「銀の宣託を預かって来ている。」

そうと言って外套の懐から取り出したのは、真っ黒な封筒が一通。
うっと息を詰め、そのまま憎々しげに薄い封筒を睨みつけたのが太宰なら、
不意にピピピピ…っと主張を始めた携帯端末の呼び出し音が鳴り、
おやと気づいて自身のスカートのポケットをまさぐった与謝野が、
液晶へ現れた名にギョッとしてから、話し中に失敬と会釈をしつつ通話に出る。

 「…はい。ええ。…それは、でも…。そうですか。判りました。」

頬を当てたツールをよそに、海原のどこかにでもいるのじゃないかと視線をさまよわせ、
それから話の内容へだろう微妙に慌てて見せたが、
相談ではなく決定事項の通知だったようで、そのまま飲んで丁寧に会話を終える。
丁重な口調から社長からかと思われたが さにあらん。

 「乱歩さんからの伝言だよ。素敵帽子くんの提案を飲もうって。」

勿論のこと、福沢社長の意も通してあるとのことだそうで。
結構ドタバタした経緯だったのにとか、
思いもよらない展開が結構挟まっていたのに、
何でここに居ないお人の一存で決められちゃうのか、
いやさ、こういう結末に辿り着いたことどうやって知ったのだろかと、
芥川と敦は揃ってキョトンとしていたが、

 「…さすがは乱歩さんですね。何でもお見通しだ。」

諦め半分、外国俳優のように両手を差し上げつつ肩をすくめた太宰の言いようから察するに、
武装探偵社ではこういう流れは特に奇異なそれではないらしい。

 『貸しを作って笠に着たいわけじゃあないけれど、
  どうやら至近にきな臭い動きもあるようだし、だったら深い情報を共有したい相手でもあるからね。』

のちにそんな風に言ってのけ、
そしてその言の通り、ヨコハマに君臨する二大組織がそれぞれに
協定を組む必要が出てくる事態へ巻き込まれてゆくのだが、それはまた別のお話。






to be continued.(20.07.28.〜)


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 *ちょっと乱暴な手打ちですいません。
  国木田さんでなくとも、マフィアの提案に丸め込まれてどうするかという流れですが、
  乱歩さんはこの先までも見据えていたということで。